そんななか花嫁と母親が行う儀式として、人気を集めているものがあります。
その名も「紅差しの儀」。
みなさんは聞いたことがありますか?
「紅差しの儀」とは
別名、「嫁ぎの紅」「紅引きの儀」ともいわれるこの儀式は、花嫁となる娘の唇に、母親が紅筆で口紅を塗ってあげることを指します。
もともと紅、つまり赤色は魔よけや厄除けのために、昔から使用されてきた色です。神社の鳥居や仏閣の橋などを見れば、その由来がよくわかりますね。身近なところでは、お祝いの席でふるまわれる「お赤飯」なども、そのひとつです。昔から日本人は、小豆を使って米を赤く色づけすることで、ふりかかる邪気を払い、幸運が長く続くよう願ってきました。
「紅差しの儀」が持つ意味も、まさにその通り。母親は嫁ぎ先へ送り出す娘が幸せになるように、その身に一切の災いが降りかからぬように願いながら、紅筆で丁寧に赤色をつけていきます。
また、紅を差す間の静かに流れる時間は、母娘水いらずで過ごせる貴重な時間にもなります。ここまで一生懸命に育ててくれたお母さんに「ありがとう」の気持ちを伝え、結婚前に「娘」として過ごす、最後のひととき。そんな貴重な瞬間をもたらしてくれるのが、この「紅差しの儀」です。
生まれた時から、毎日服を着せ、髪を整えてきてあげた娘。その最後の“身支度”を手伝う母の姿は、当事者たちはもちろんのこと、側で見ているお父さんやスタッフたちの胸までも熱くする、感動の光景です。
どのようなタイミングで行うのか
さて、「紅差しの儀」は、一体どのようなタイミングで行えばいいのでしょうか?
新郎新婦の意向や、式の進行などにより、大きく分けて、4パターンあるようです。
- 挙式前の身支度のとき
まずオーソドックスなのは、挙式前の身支度でのタイミングです。すべての着付けやヘアメイク、化粧などを終えた後に行います。美しい花嫁姿に仕上がった娘を目の前に、ゆっくりと紅を差してあげる時間は、忘れることのできない思い出になりそうですね。
- 挙式直前のとき
会場に入る前のタイミングで、儀式を行うパターンです。これから大勢の参列者にお披露目しようとするこのタイミングは、新郎新婦ともにもっとも緊張が高まる瞬間でもあります。そんなとき、お母さんの優しい手つきで行われる「紅差しの儀」は、花嫁の緊張をほぐす、よいきっかけになるかもしれません。
- お色直しのとき
お色直しのタイミングで、この儀式を取り入れる方もいらっしゃいます。新しい衣装に身を包み、気分も一転するお色直し。支度が整ったあとに、最後、お母さんに紅を塗ってもらうこの時間は、花嫁さんがほっとできる貴重なタイミングとなるでしょう。
- 式の中で、参列者に見守られながら
式の最中に、儀式を行うパターンもあります。これまでお世話になった多くの親戚、知人たちに見守られながら、母から娘へ「紅差しの儀」を行います。花嫁の表情が、ふと「娘」に戻る瞬間を目にしながら、その「娘」を送りだす母の切なくも幸せな気持ちに思いを馳せると、見ている側の心までも温まりそうです。
4つのうちどのタイミングであっても、この儀式からは深い親子の愛情が伝わってきます。ご自分たちの結婚式なら、どのような取り入れ方がふさわしいのか、主役であるお二人で話し合うのも、また楽しいイベントですね。
シンプルだけれど記憶に残る瞬間。母から娘への想いを込めて
ところで、この「紅差しの儀」は、ウェディングドレスで行う「ベールダウン」とは違って、和洋どちらのスタイルであっても取り入れることができます。大がかりな準備や金額がかかるわけでもなく、そのうえ、儀礼を行うのはお母さんでなくても、花嫁姿を喜んでくれるお祖母さんや、姉妹、親しい友人などに頼む方もいるとのこと。
その点も踏まえ、この「紅差しの儀」は、誰でも行えるシンプルな儀式として、今後も花嫁さんたちの間で、ますます広く取り入れられていくことでしょう。
おわりに
以上、今回は「紅差しの儀」についてご紹介しました。
この儀礼を通じて再確認できる、母から娘への深い愛情。新しい世界へ巣立っていく娘にとっても、そんな娘を見送る母にとっても、ぜひオススメしたいイベントのひとつです。
※文中の写真は、東京都文京区にある『旧安田楠雄邸』 にて撮影しました。
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